みなさんは「にやける」を正しく使えていますか?
この言葉、実はほとんどの日本人が間違って使っているんです!
わたしもつい最近知ったのですが、本当はどのような意味なのでしょうか?
にやけるの間違った使い方
「さっきキスしたことを思い出してついにやけてしまった」
「にたにたにやけきった顔でこちらを見ている」
このように「うすら笑いを浮かべる」という意味で使うのは実は誤用です。
「にやにやする」と音が似ていることから、間違えている人が続出しているようです。
平成23年度の「国語に関する世論調査」では正しい意味で使っている人はたった14.7%でした。
調べたところによると、1970年以降に書かれたものは、プロの小説家や翻訳家の書いた本にも「薄ら笑いをうかべる」という意味で書かれているものがほとんどでした。
私たちが間違って覚えてしまうのもしょうがないですね。
にやけるの正しい意味・使い方
にやけるの本当の意味は男性が女性のようにめかしこんだりして、色っぽい様子・なよなよしている様子という意味です。
「私の隣ににやけた顔の長髪の男が座った」という文を聞くと、気持ちが悪い男が座ったようですが、正しい意味でとらえると、ビジュアル系バンドのボーカルのような男が座ったという感じです。
「にやける」は今の言葉で言うと「オネエっぽい」というかんじでしょうか。
ただ「にやける」という言葉は否定的な意味で使われていたようです。
最近はほとんど正しい意味で使われていませんから、過去の小説から例を見ていきましょう。
さすがに豹一は未だ少女のような顔をしていたのである。しょんぼりしていたので、一層可憐だった。洋服がお粗末だったので、にやけて見えることも免れていた。
『青春の逆説』 織田作之助
免れていたとありますから、にやけてみえることはいいことではなかったようですね。
つまりナオミは、最初の晩は西洋人の所へ泊ったらしいのですが、その西洋人はウィリアム・マッカネルとか云う名前で~中略~あのずうずうしい、お白粉を塗った、にやけた男がそれだったのです。
『痴人の愛』 谷崎潤一郎
白粉を塗っているというのは現代の感覚だと確実に「オネエ」ですね。
宦官と見た者は、見つかり次第に殺された。宮中深く棲んでいた十常侍の輩なので、兵はどれが誰だかよく分らないが、髯ひげのない男だの、俳優のようににやけて美装している内官は、みんなそれと見なして首を刎ねたり突き殺したりした。
『三国志 桃園の巻』 吉川英治
宦官というのは男性の大切なところを切った官吏のことです。
この文では化粧などしなくても、きれいな服を着ているだけで「にやけている」といっていますね。
じいさんばあさんか、女のひとり旅か、にやけた商人か、そんな人たちを選んでおどかしたら、きっと成功するわよ。
『新釈諸国噺』太宰治
これは追いはぎを生業とする山賊の親子の会話なのですが、力の弱いものを襲えば成功すると妹をそそのかしている場面です。
弱者の中ににやけた商人が入っています。
青空文庫を見ると最近翻訳されたもの以外に「にやける」を間違った意味で使っている作品はほとんどなかったので、50年前ごろは正しく使われていたようです。
にやけるを漢字で書くと?その語源は?
にやけるを漢字で書くと「若気る」と書きます。
もともと名詞「若気」として使われていました。
「若気」とは男色の対象になった少年のことを指す言葉で、にゃけと発音していたそうです。
そこから女性のようにめかしこんだ男性という意味になっていったようです。
また過去の小説などには柔弱や柔気とかいて「にやけ」と読ませる当て字もあるようです。
なんとなく雰囲気が伝わりますね。
まとめ
- 「にやける」の正しい意味は「男性が女性のようにめかしこんだりして、色っぽい様子」
- 薄ら笑いを浮かべる場合は「にやにやする」
現在正しい意味で「にやける」を使っている人はあまりいません。
正しい意味で使ってもほかの人には伝わらないでしょう。