「うかがう」という単語。
日頃は、「伺う」を目にすることが多いと思います。
ただ、「窺う」という漢字もたまに使用されていることがありますし、「覗う」もあります。
え、と思うことのないように、意味をしっかり押さえておきませんか。
「伺う」の意味・使い方
まず、この言葉は「謙譲語」だ、ということを抑えましょう。
謙譲語とは敬語の一つで、目上の人に対する言葉遣いです。
自分の動作を謙譲することで、相手に対する敬意を表します。
先生、先輩、上司、またお客さまに使います。
一番の意味は、「訪問する」の謙譲形です。
目上の人の家や、取引相手の会社を訪ねるときなどに使います。
次には、「目上の人の意見や話を聞く」という意味の謙譲形です
さらに、「上司の決裁をもらう」という意味の謙譲形もあります。
例:明日、お宅に伺ってもよろしいでしょうか。
例:お話を伺って、とても感銘を受けました。
例:この件について、先生のご意見を伺いたいのですが。
例:社長にお伺いを立てないと、なにも進まない。
「窺う」の意味・使い方
まず、「目には見えない状況を見ようとすること」、という意味があります。
その方法はいろいろです。
「隙間から窺う」もありますし、「耳を凝らして窺う」、あるいは第三者からの情報で「状況を窺う」こともあります。
もうひとつ「チャンスを狙う」という意味があります。
目標に向かって、虎視眈々と狙いを定めるという意味です。
例:偵察隊が、敵の動きを窺って帰ってきた。
例:世論調査は、国民の考えを窺う方法のひとつだ。
例:宇宙は、窺い知ることのできない不思議に満ちている。
例:上司の顔色ばかり窺っている奴がいる。
例:ライオンが草むらの陰から、獲物のスキを窺っている。
例:今度のチームは、優勝を窺うだけの実力がある。
「覗う」の意味・使い方
この漢字を見て、あれ、と思いませんか?
はい、この漢字「覗」は訓読みで「覗く=のぞく」とも読み、そう使われることのほうが多い言葉です。
「のぞく」とは、本来は、隙間や小さな穴から一部分を見ることです。
そこから派生して「盗み見る」という、印象の悪い意味を持つようになっています。
「覗う」は、そこまでではありませんが、「覗き見」という意味に変わりはありません。
知的な行為ではなく、好奇心や邪心に駆られての衝動的な行動、という意味が強いですね。
例:鍵穴から部屋の中を覗う不審者がいる。
例:最上階なら、窓から覗われる心配はありません。
例:神社の祠のなかを覗ってみたが、なにも見えなかった。
伺う・窺う・覗うの違いは?
「伺う」は謙譲語ですし、意味もはっきりしていますから、用途に迷うことはありません。
「進退伺い」、「ご機嫌伺い」などの慣用句も、目上の人にしか使いません。
問題は、「窺う」と「覗う」のニュアンスの違いです。
どちらにしても、「見えないものを観ようとする」意味を持ちます。
では、違いを成り立ちで見てみましょう。
「窺」は、建物の中から外の様子を見ようとする状態が、漢字になったものです。
「覗」は、神様の心を観ようとする状態。
つまり、とても失礼なことです。
やはり、「覗う」には、マナー違反というか、お行儀の悪い行動、という意味が含まれているようです。
もう一つの違いは、「窺う」は、広い視野を持っていること。
空間的にも時間的にも大きいですね。
大きな外を見る印象です。
それに対して「覗う」は、瞬間の動きをとらえたものです。
しかも視覚がとらえるものに限られますし、見ることのできる範囲も小さいですね。
「針の穴から天井覗く」という慣用句がぴったりです。
まとめ
- 「伺う」は、目上の人の家を訪ねたり、話や意見を聞く謙譲語。
- 「窺う」「覗う」は、隙間から見ること。ただし、「窺う」は、いろんな情報を得ること。「覗う」は、視覚のみの印象というニュアンスが強い。
ということで、表題の「様子をうかがう」は、「窺う」が妥当でしょう。
見えるものだけでなくさまざまな情報を得て、総合的に判断しようとしている状態だと思われます。
同音異義の漢字ってやっかいだけど、意味がしっかり区別できれば迷いませんね。